STRENGTH ARTS
VBT(Velocity Based Training):挙上速度を用いた次世代のプログラム
SPORTS SCIENCE PROGRAM 11 minLEVEL: 上級

VBT(Velocity Based Training):挙上速度を用いた次世代のプログラム

バーベルの「スピード」を測定し、その日の1RMと疲労度を完全可視化する

SA
STRENGTH ARTS LAB
VER 1.0.0

従来のトレーニングは「重さ」と「回数」でプログラムを管理していました。しかし、最新のスポーツ科学では、それ以上に重要な指標として「挙上速度(Velocity)」に注目が集まっています。バーベルに小型のセンサーを取り付け、「何メートル毎秒(m/s)で挙がったか」を測定するVBT(Velocity Based Training:速度特化型トレーニング)は、疲労による出力低下を客観的な数値で可視化し、オーバートレーニングを完全に防ぎながら最大の筋力とパワーを引き出す、次世代のプログラミング手法です。

01「速度」と「1RM(最大重量)」の完全な相関関係

人間の筋肉は、軽い重量なら速く挙上でき、重い重量になるほど挙上速度は遅くなります。これは「力・速度関係(Force-Velocity Curve)」と呼ばれる物理法則です。

重要なのは、どんなに強い人でも弱い人でも、「自分のMAX重量(1RM)を挙げる時の限界のスピード」はほぼ一定だということです(スクワットの場合は約0.3 m/s付近)。

つまり、ウォーミングアップの軽い重量を「全力のスピード」で挙げ、その速度をセンサーで測ることで、「今日の自分の調子なら、MAXは何キロ挙げられるか」が、その日のうちに計算(予測)できてしまうのです。これがVBTの最大の魔法です。

02速度低下(Velocity Loss)によるセットの終了

従来のプログラムでは「10回を目標にするが、8回目で潰れた」という失敗がよく起こります。しかしVBTでは、回数ではなく「速度の低下率(Velocity Loss)」でセットを終了させます。

例えば、「最初の1レップ目の速度から、20%スピードが落ちたらそのセットは終了する」というルール(20% VL)を設定します。

・1回目:0.50 m/s ・2回目:0.48 m/s ・3回目:0.45 m/s ・4回目:0.39 m/s(20%低下したため、ここで強制終了)

これにより、フォームが崩れるほど疲労する「無駄なレップ」を完全に排除し、質の高い「速くて強い筋収縮」だけを抽出してトレーニングすることができます。

  • 10%〜20%の速度低下で終了:筋力(ストレングス)と爆発的パワーの向上に最適。疲労が残りにくい。
  • 30%〜40%の速度低下で終了:筋肥大(ハイパートロフィー)に効果的だが、神経系の疲労が大きい。

03アスリートにとってのVBTの絶大な価値

ジャンプ力やスプリント能力を高めたいアスリートにとって、ギリギリの重量をブルブル震えながらゆっくり挙げる(低速度での筋力発揮)トレーニングは、スポーツの実際の動き(瞬発力)とかけ離れており、逆効果になることすらあります。

VBTを用いて、「常に 0.8 m/s 以上の爆発的なスピードが維持できる重量(例:1RMの50%〜60%)」を選択してトレーニングを行うことで、筋肉の「収縮速度」そのものを書き換え、スポーツのパフォーマンスに直結する真の「パワー(力×速度)」を鍛え上げることができます。

【実践】センサーがない場合の代替案(主観的VBT)

高価な測定センサーを持っていなくても、VBTの「思想」は取り入れられます。ウォーミングアップの際、バーベルをただ挙げるのではなく、「コンセントリック(立ち上がる局面)だけは、バーベルが肩から浮き上がるくらい全力のスピードで爆発的に挙げる(Compensatory Acceleration Training)」ことを意識してください。それだけでモーターユニット(神経系)の動員率は飛躍的に高まります。

まとめ

VBTは、根性論や勘に頼っていたウエイトトレーニングを、F1カーのデータ・テレメトリーのような精密な科学へと進化させました。バーベルの「速度」を意識し、疲労の境界線を数値で可視化することで、あなたのトレーニングの「質(クオリティ)」は極限まで高まるでしょう。