アスリートの能力を正確に評価するための絶対条件である、テストの「妥当性(本当に測れているか)」と「信頼性(毎回同じ結果が出るか)」について解説します。
テストや測定における最も重要な特性が「妥当性(Validity)」です。これは「そのテストが、測定しようとしている能力を本当に測定できているか」という度合いを指します。例えば、アメリカンフットボールのラインマン(巨漢の選手)のパフォーマンスを予測するために、長距離マラソンのタイムを測定することは、競技のエネルギー供給系(ATP-CP系)と全く合致していないため「妥当性がない」と言えます。妥当性には、テストが理論的に正しい能力を測っているかを示す「構成概念妥当性」や、専門家が見て明らかに測定したい内容に合致していると感じる「表面的妥当性」、過去の信頼できるテスト結果と相関関係があるかを示す「基準関連妥当性」などの種類があります。CSCSは、常に競技特性に最も妥当なテストを選択する責任があります。
妥当性に次いで重要なのが「信頼性(Reliability)」です。これは、同じテストを同じ条件で繰り返した時に、一貫した同じ結果が得られるか(再現性)という度合いを指します。体重計に何度乗っても同じ数値が出るのが「信頼性が高い」状態です。もし、テストの実施手順が曖昧だったり、選手のモチベーションにムラがあったりすると、信頼性は低下します。信頼性を高めるためには、厳密なマニュアルの作成と徹底が不可欠です。なお、「妥当性が高いテストは必ず信頼性も高い」ですが、「信頼性が高くても妥当性がないテスト(例:アメフト選手のマラソンタイムを正確に測り続ける)」は存在することに注意が必要です。
テストの信頼性を低下させる原因は様々ですが、代表的なものに検者(テストを測定する人)の誤差があります。「検者内(Intrarater)信頼性」は、同じ一人の測定者が毎回同じ基準でストップウォッチを押せているかという一貫性です。「検者間(Interrater)信頼性」は、Aコーチが測ってもBコーチが測っても同じ数値になるかという一貫性(客観性)です。検者間信頼性を確保するためには、事前にコーチ陣で綿密なミーティングを行い、「どの瞬間に測定をスタート・ストップするか」の基準を完全に統一しておく必要があります。
適切なテストを選ぶ際は、妥当性と信頼性だけでなく「競技の特異性」を考慮します。①バイオメカニクス的特異性(競技と同じような筋肉の収縮様式や関節角度のテストか)、②エネルギー供給系の特異性(競技と同じ時間の持続時間か)、③選手の経験値(初心者に高度な技術を要する1RMパワークリーンを行わせるのは妥当ではない)、④年齢と性別の4つです。これらを総合的に判断し、そのチームや選手に最もフィットしたテストバッテリー(複数のテストの組み合わせ)を構築します。
Q. 2人の異なるコーチが同じ選手の垂直跳びを測定したところ、コーチAは「50cm」、コーチBは「60cm」という全く異なる結果が出ました。このテストバッテリーにおいて欠如していると考えられる要素はどれでしょうか?
A. 検者間(Interrater)信頼性
解説: 異なる測定者(コーチ)の間で結果が一致しない場合、検者間信頼性(客観性)が低いと判断されます。測定の開始基準や終了基準(どこまで跳んだら記録とするか)の認識をコーチ間で事前にすり合わせる必要があります。