怪我を防ぐための命綱である「スポッター(補助者)」の役割。補助が必要な種目、絶対にしてはいけない種目、そして正しい手渡し(リフトオフ)の方法について。
フリーウエイトトレーニングにおいて、選手が限界に達して重りを挙げられなくなった際、安全にバーを受け取り怪我を防ぐ役割を担うのが「スポッター」です。スポッターが必須となるのは以下の条件に当てはまるエクササイズです。
① 頭上(オーバーヘッド)にバーを挙げる種目(例:ショルダープレス)
② 顔の上にバーがある種目(例:ベンチプレス、ライイング・トライセプスエクステンション)
③ 背中や肩の前面にバーを担ぐ種目(例:バックスクワット、フロントスクワット)
これらは、失敗した際にバーが頭や首、胸に落下する致死的なリスクがあるため、必ずスポッターを配置(またはセーフティラックを設定)しなければなりません。
一方で、絶対にスポッターをつけては【いけない】種目があります。それが、パワークリーンやスナッチなどの「パワーエクササイズ(クイックリフト)」です。これらの種目はバーの軌道が非常に速く、また失敗した時にバーが前や後ろのどこに落ちるか予測不可能です。もしスポッターが不用意に近づいてバーを掴もうとすれば、スポッター自身が大怪我をするだけでなく、選手の逃げ道を塞いで選手を巻き込む大惨事になります。パワーエクササイズにおいて失敗しそうになった場合は、「バーを放り投げて自分は安全な方向へ素早く逃げる(避ける)」技術を最初に教え込む必要があります。
ダンベルを用いた種目(例:ダンベル・ショルダープレスやダンベル・フライ)で補助を行う場合、初心者のスポッターはよく「選手の肘」を下から支えようとします。しかし、選手が限界を迎えて肘の力が抜けた瞬間、ダンベルが内側に倒れ込んできて選手の顔を直撃する危険があります。ダンベル種目の正しい補助位置は、「選手の手首に最も近い前腕部」、あるいは「ダンベル自体」を下から支えることです。
ベンチプレスの補助では、スポッターは「オルタネイトグリップ(順手と逆手を交差させた握り方)」でバーの中央近くを握り、バーが滑り落ちないように確実にホールドする必要があります。
ベンチプレスやスクワットを開始する際、スポッターがバーをラックから外して選手のスタートポジションまで誘導する動作を「リフトオフ(Lift-off)」と呼びます。リフトオフの際、最も重要なのは選手とスポッターの事前のコミュニケーションです。「何回挙げる予定か」「補助はどれくらい必要か」「『1、2、3』の3のタイミングでラックから外す」といった認識を完全にすり合わせておくことで、事故を未然に防ぐことができます。
Q. ダンベル・シーテッド・ショルダープレスを行う選手に対して、スポッター(補助者)は選手の身体のどの部分を支えて補助するのが最も安全で適切でしょうか?
A. 選手の手首の近く(前腕部)
解説: 肘を補助してしまうと、選手がバランスを崩した時にダンベルが頭部に落下するのを防ぐことができません。必ずダンベルの直下である「手首付近」をホールドする必要があります。