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スポーツ心理学

フィードバックの与え方と自己効力感

「今の惜しかったぞ!」「次はもっと腰を落とせ」。コーチの声かけ(外在的フィードバック)の技術と、アスリートの自信(自己効力感)を高めるアプローチについて。

1. 内在的フィードバックと外在的フィードバック

アスリートが自分の動きを修正するためには「フィードバック(結果の情報)」が不可欠です。これには2種類あります。
内在的フィードバック(Intrinsic Feedback):アスリート自身の身体から得られる感覚情報です。「バーが足にぶつかった」「重心が前に傾いた」など、視覚、聴覚、固有受容覚(筋肉や関節のセンサー)を通して得られます。
外在的フィードバック(Extrinsic Feedback):コーチの声かけや、ビデオ映像、スピード測定器の数値など、外部のソースから与えられる情報です。これをさらに細かく分けると、結果の成功・失敗を伝える「結果の知識(KR:Knowledge of Results)」と、動作の質(フォーム)を修正する「パフォーマンスの知識(KP:Knowledge of Performance)」になります。

2. コーチングにおける効果的なフィードバックの頻度

熱心なコーチほど、選手が動くたびに毎回(100%)アドバイスを与えがちです。しかし研究によると、フィードバックを与えすぎると、選手はコーチの指示に「依存」してしまい、自分で考えること(内在的フィードバックの活用)をやめてしまいます。練習中は上手くできても、コーチがいない試合本番では全く動けなくなってしまうのです。そのため、上達するにつれてアドバイスの頻度を徐々に減らしていく「フェーディング(漸減)手法」や、一定のミスが起きた時だけ声をかける「帯域(バンド幅)フィードバック」が、自立したアスリートを育てるために有効です。

3. 自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは

心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した「自己効力感(Self-Efficacy)」とは、特定の状況やタスクにおいて「自分なら絶対に上手くやれる、成功できる」という強い確信(自信)のことです。一般的な「自信」よりも具体的で、自己効力感が高いアスリートほど、困難な状況でも諦めずに高いパフォーマンスを発揮します。

4. 自己効力感を高める4つの情報源

コーチは以下の4つのアプローチを使って、アスリートの自己効力感を意図的に高めることができます。
達成経験(過去の成功体験):最も強力な要因です。練習で小さな成功体験を積み重ねさせ、「できた!」という事実を作ります。
代理経験(モデリング):自分と似たレベルの選手やチームメイトが成功している姿を観察させることで、「あいつにできるなら自分にもできる」と思わせます。
言語的説得:コーチや仲間からの「お前ならいける」「フォームは完璧だ」という励ましや、論理的な裏付けによるポジティブな声かけです。
生理的・情動的状態の解釈:試合前の心臓のバクバクや手の震え(緊張)を、「不安」ではなく「身体が最高の準備を整えている証拠(ワクワク)」だとポジティブに解釈させる認知的アプローチです。

理解度チェック:例題

Q. バンデューラの理論において、アスリートの「自分なら成功できる」という自己効力感を高めるために最も強力で確実な影響を与える要素(情報源)は何でしょうか?

▶ 答えと解説を見る

A. 達成経験(過去の成功体験)

解説: 言葉で励まされる(言語的説得)よりも、実際に「成功した」という自分自身の過去の実績・経験が、次もできるという最大の自信に繋がります。そのため、コーチは練習で確実にクリアできる目標から設定させることが重要です。

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