一年を通じて常にピークの状態でいることは不可能です。オーバートレーニングを防ぎ、重要な試合に合わせてコンディションを最高に持っていくための「期分け」の概念について。
ハンス・セリエが提唱した「汎適応症候群(GAS)」は、ストレスに対する人体の反応を3段階(警告、抵抗、疲労)で説明したものです。トレーニングというストレスを与え続けると、身体はそれに「適応(抵抗)」して強くなりますが、一定の限界を超えると「疲労(オーバートレーニング)」に陥りパフォーマンスが低下します。これを防ぎ、計画的に適応を引き出す戦略が「ピリオダイゼーション(期分け)」です。
ピリオダイゼーションは、期間の長さによって3つの階層に分けられます。
・マクロサイクル:最も長い期間。通常は数ヶ月から1年間(オリンピック選手の場合は4年間)を指します。
・メゾサイクル:マクロサイクルの中にある数週間〜数ヶ月の期間ブロック。「筋肥大期」「筋力期」などに分かれます。
・ミクロサイクル:通常1週間(数日〜2週間)の具体的なトレーニングメニューです。
年間計画は、試合のスケジュールに合わせて大きく4つの期間に分けられます。全体的な流れとして、「高ボリューム・低強度」から「低ボリューム・高強度」へと徐々に移行していきます。
① 準備期(オフシーズン):試合が最も遠い時期。最初は「筋肥大/持久力フェーズ」(例: 10回×3セット)で基礎となる筋肉の鎧を作り、徐々に「基礎筋力フェーズ」(例: 5回×4セット)へと強度を上げていきます。
② 第1移行期(プレシーズン):試合の直前。基礎筋力を爆発的な力に変換する「筋力/パワーフェーズ」(例: 3回×3セット、高強度・ハイスピード)を行います。
③ 試合期(インシーズン):試合が続く期間。目標は「ピークの達成」または「維持」です。疲労を最小限に抑えるため、トレーニングのボリューム(セット数や回数)を大幅に減らし、強度は中〜高を維持します。
④ 第2移行期(アクティブリカバリー / ポストシーズン):シーズン終了直後。厳しいトレーニングを休止し、非特異的なレクリエーション(別のスポーツなど)を行って心身の完全な回復を図ります。
伝統的なモデルは、数週間ごとに強度を徐々に上げていくため「線形(リニア)モデル」と呼ばれます。一方、日ごとに「月曜日は筋力(重い)、水曜日は筋肥大(中くらい)、金曜日はパワー(軽い・速い)」と大きく強度とボリュームを変動させる手法を「非線形(波状/アンジュレイティング)モデル」と呼びます。非線形は、試合が長期にわたって頻繁に行われるスポーツ(野球やバスケットボールなど)で近年よく用いられます。
Q. 伝統的な線形ピリオダイゼーションモデルにおいて、最も「トレーニングのボリューム(総仕事量)が高く、強度が低い」フェーズは次のうちどれでしょうか?
A. 準備期の「筋肥大/持久力フェーズ」
解説: オフシーズンの初期は、基礎体力を構築し筋肉量を増やすために、高ボリューム(例:10〜12回×複数セット)で低〜中強度(67〜75% 1RM)のトレーニングを行います。シーズンが近づくにつれて、量は減り、強度が上がっていきます。