レジスタンストレーニングは、テストステロンや成長ホルモンなど、筋肉の合成を促すホルモンの分泌を刺激します。そのメカニズムと効果的なプログラム変数について。
トレーニングによって筋肉が傷ついた後、より太く強く回復(超回復)するためには、タンパク質の合成を強力に後押しする化学物質が必要です。それが「アナボリック(同化)ホルモン」です。代表的なものとして、男性ホルモンの一種である「テストステロン」、脳下垂体から分泌される「成長ホルモン(GH)」、そして肝臓や筋肉から分泌される「インスリン様成長因子(IGF-1)」があります。これらは血流に乗って標的となる筋肉の細胞にある受容体(レセプター)と結合し、DNAに働きかけて筋肉のタンパク質合成のスイッチをオンにします。ウエイトトレーニングという物理的なストレスは、これらのアナボリックホルモンの分泌を爆発的に高める強力なシグナルとなります。
ただ重いものを持てばホルモンが大量に出るわけではありません。テストステロンや成長ホルモンの分泌を最大化するためには、特定の「プログラムデザイン(変数の組み合わせ)」が必要です。科学的なエビデンスに基づくと、最もホルモン応答を引き出すのは以下のような条件を満たすトレーニングです。まず、多くの筋肉を同時に動員する「多関節種目(スクワット、デッドリフト、クリーンなど)」であること。次に「中〜高強度(1RMの80%〜90%)」であること。そして、複数セットを行い「総ボリュームを大きくする」こと。最後に、これが非常に重要ですが、「セット間のインターバルを短く(1分前後)設定する」ことです。短い休息時間で乳酸や水素イオン(代謝的ストレス)が筋肉に蓄積することが、成長ホルモン等の分泌を強力に促進するトリガーとなるからです。
筋肉を合成するホルモンとは逆に、身体が過度なストレスを受けた際に分泌され、筋肉を分解(カタボリック)してしまう厄介なホルモンが存在します。それが副腎皮質から分泌される「コルチゾール(ストレスホルモン)」です。コルチゾールは、長時間の過酷なトレーニング、オーバートレーニング状態、睡眠不足、あるいは心理的なストレスなどによって過剰に分泌されます。体内のエネルギー(糖)が不足すると、コルチゾールは筋肉のタンパク質をアミノ酸に分解し、それを肝臓でエネルギー(糖)に変換しようとします(糖新生)。つまり、コルチゾール濃度が高い状態が続くと、いくら筋トレをしても筋肉は削られていく一方になります。
アスリートの筋肉の発達は、アナボリックホルモン(合成)とカタボリックホルモン(分解)の「綱引き」の結果として決まります。テストステロンとコルチゾールの比率(T/C比)は、選手の疲労度やオーバートレーニング状態を評価する重要な指標として用いられます。ウエイトトレーニングを開始すると、テストステロンや成長ホルモンの分泌が高まりますが、セッションが長引き「60分〜90分」を超えてくると、エネルギー枯渇のストレスによりコルチゾールの分泌が急増し、綱引きの形勢が逆転してしまいます。そのため、筋肉を増やす(筋肥大)ことを目的とするS&Cプログラムにおいては、ダラダラと何時間もトレーニングを行うのではなく、「1時間前後の短い時間で、集中して高いボリュームと強度を稼ぐ」ことが、内分泌系(ホルモン)の観点から最も理にかなった戦略となるのです。
Q. オーバートレーニングや長時間の過酷な運動によって過剰に分泌され、筋肉を分解(カタボリック)してエネルギーに変えようとするストレスホルモンは何でしょうか?
A. コルチゾール
解説: コルチゾールは過度なストレスに反応して副腎から分泌され、筋肉を削って糖を作り出そうとします。逆にテストステロンや成長ホルモンは筋肉を合成(アナボリック)するホルモンです。