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栄養学

摂食障害と女性アスリートの栄養問題

コーチとして見逃してはならない、神経性無食欲症(拒食症)と神経性大食症(過食症)のサインと、専門医へのリファー(紹介)の重要性について。

1. アスリートにおける摂食障害のリスク

スポーツの世界では、体重の軽さが有利に働く競技(体操、フィギュアスケート、長距離走など)や階級制の競技において、アスリートが「体重」や「体型」に対して強迫的な執着を持つリスクが一般人よりも高くなります。これが極端に行き過ぎると、精神疾患である「摂食障害(Eating Disorders)」へと発展します。摂食障害は単なる「偏食」ではなく、心臓発作や骨粗鬆症など、生命を脅かす極めて深刻な医学的状態です。CSCSの役割は、自ら治療することではなく、初期の兆候(サイン)を見逃さず、直ちにスポーツドクターや臨床心理士などの専門家に「リファー(紹介・委ねる)」することです。

2. 神経性無食欲症(Anorexia Nervosa:拒食症)

神経性無食欲症は、自分が痩せ細っているにもかかわらず「太っている」という歪んだ自己身体像(ボディイメージの歪み)を持ち、体重が増えることに対して異常な恐怖を抱く疾患です。極端な食事制限に加え、食べたカロリーを消費しようと過剰なまでにトレーニングを続ける傾向があります。兆候としては、急激な体重減少、他人の前で食事をすることを極端に避ける、常にカロリーや体重の話ばかりする、無月経、うぶ毛が濃くなる、極度の寒がりになることなどが挙げられます。放置すれば餓死や心停止に至る最も致死率の高い精神疾患の一つです。

3. 神経性大食症(Bulimia Nervosa:過食症)

神経性大食症は、コントロールを失って短時間に尋常ではない量の食物を詰め込む「過食(むちゃ食い)」と、その直後に体重増加を防ぐために無理に吐き出したり、下剤を乱用したりする「代償行為(パージング)」を繰り返す疾患です。拒食症とは異なり、体重は正常範囲内かやや重いことが多く、外見からは気づきにくいという特徴があります。主な兆候としては、食後すぐにトイレに駆け込む(嘔吐のため)、胃酸の逆流による歯のエナメル質の溶け(虫歯の多発)、無理に吐こうとして手の甲に歯が当たることでできるタコ(ラッセル徴候)、唾液腺の腫れ(エラが張ったような顔つき)などが挙げられます。

4. コーチとしての適切な対応

アスリートに摂食障害の疑いがある場合、コーチが「ちゃんと食べろ」「吐くのをやめろ」と頭ごなしに指導したり、みんなの前で体重を指摘したりすることは絶対にしてはなりません。それは彼らをより追い詰め、嘘をついて隠すように仕向けるだけです。コーチは、パフォーマンスや体重ではなく「本人の健康や精神状態を純粋に心配している」というメッセージを非難がましくない態度で伝え、信頼関係を保ちながら専門の医療機関へとつなぐ架け橋にならなければなりません。

理解度チェック:例題

Q. 摂食障害のうち、短時間に大量の食物を摂取する「過食」と、体重増加を防ぐために意図的に嘔吐したり下剤を乱用したりする「代償行為」を繰り返す疾患を何と呼ぶでしょうか?

▶ 答えと解説を見る

A. 神経性大食症(過食症 / Bulimia Nervosa)

解説: 体重が標準に近いため周囲から見過ごされがちですが、頻繁な嘔吐は食道炎や電解質異常(不整脈)を引き起こす深刻な状態です。手の甲のタコ(ラッセル徴候)や歯の溶けが発見のサインとなります。

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