パフォーマンスを落とさずに体脂肪を減らす減量法と、無駄な脂肪をつけずに筋肉を増やす「クリーンバルク」のカロリー計算について。
筋肉を増やす(増量)か、体脂肪を減らす(減量)かを決定づける最も絶対的な法則は「エネルギーバランス」です。どんなに高価なサプリメントを飲み、激しいトレーニングをしても、1日の「摂取カロリー」が「消費カロリー」を下回っていれば体重は落ち(アンダーカロリー)、上回っていれば体重は増えます(オーバーカロリー)。CSCSはまず、アスリートの基礎代謝量(BMR)と、トレーニングや日常活動による活動代謝量を計算し、1日の総消費カロリー(TDEE)を正確に見積もることからプログラムをスタートさせなければなりません。
アスリートの減量は、ただ体重を落とせば良いわけではありません。「筋肉量とパフォーマンスを維持しながら、体脂肪だけを削る」ことが求められます。急激なカロリー制限(1日1000kcal以上のマイナスなど)は、身体が飢餓状態と錯覚して代謝を落とし、大量の筋肉を分解してエネルギーに変えてしまいます。安全で筋肉を維持できる減量ペースは「1週間に体重の約0.5〜1%(体重70kgなら約350〜700g)」の減少です。体脂肪1kgを落とすには約7200kcalのマイナスが必要なため、1日あたり「約500kcalのマイナス(アンダーカロリー)」を作ることが基本戦略となります。この際、筋分解を防ぐためにタンパク質の摂取量を通常より高く(体重1kgあたり2.0g〜2.5g)設定します。
逆に、筋肉量を増やしたい増量期(バルクアップ)においては、摂取カロリーが消費カロリーを上回る「オーバーカロリー」状態にする必要があります。しかし、「とにかく何でも食べて体重を増やす(ダーティーバルク)」手法は、大量の体脂肪を蓄積させ、結果的に競技でのスピードやキレを奪うことになります。無駄な体脂肪をつけずに筋肉の合成を最大化する「クリーンバルク」の推奨ペースは、1日に「+300〜500kcal」程度の緩やかなカロリーオーバー状態を作ることです。余剰カロリーは、ジャンクフードではなく、質の高い炭水化物(お米やオートミール)と良質なタンパク質から摂取すべきです。
レスリングや柔道、ボクシングなどの階級制スポーツでは、計量直前にサウナや発汗スーツを用いて体内の水分を極限まで絞り出す「急速な減量(水抜き)」が横行しています。しかし、これは筋肉のグリコーゲンを枯渇させるだけでなく、重篤な脱水症状による心不全や腎不全、最悪の場合は死に至る極めて危険な行為です。NSCAのガイドラインでは、急速な水分カットは固く禁じられており、階級に合わせた体重調整は数ヶ月前から「計画的な体脂肪の減少」によって行うべきであると強く警告しています。
Q. 筋肉量とパフォーマンスを維持しながら安全に減量(体脂肪を落とす)を進めるための、1週間あたりの適切な体重減少ペースはどれでしょうか?
A. 1週間に体重の約0.5〜1%
解説: これ以上の急激なペース(例えば1週間に2kg以上など)で体重を落とすと、脂肪だけでなく大量の筋肉が分解され、競技パフォーマンスが著しく低下してしまいます。