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栄養学

エルゴジェニックエイド(サプリメント)

パフォーマンスを合法的に高めるサプリメント(エルゴジェニックエイド)の中で、科学的根拠(エビデンス)が最も強いものについて解説します。

1. サプリメントの位置づけと安全性

パフォーマンスの向上や回復の促進を目的として使用される物質や手法を「エルゴジェニックエイド」と呼びます。栄養サプリメントはその代表ですが、CSCSがアスリートに指導する際の鉄則は「サプリメントはあくまで基本的な食事の『補助』に過ぎない」ということです。食事、睡眠、トレーニングという土台が崩れていれば、どんな魔法の粉も効果を発揮しません。また、最も注意すべきは「アンチ・ドーピング」の観点です。市販のサプリメント、特に海外製のプレワークアウトやテストステロンブースターには、ラベルに記載されていない禁止物質が混入しているリスク(コンタミネーション)があります。アスリートには、インフォームドチョイス等の第三者機関によるドーピング検査をクリアした安全な製品のみを使用させることが絶対の責任となります。

2. クレアチン:無酸素性パワーと筋肥大の切り札

数あるサプリメントの中で、最も科学的根拠(エビデンス)が豊富で、安全性と有効性が確立されているのが「クレアチン(クレアチンモノハイドレート)」です。クレアチンを摂取すると、筋肉内の「クレアチンリン酸」の貯蔵量が増加します。これにより、ウエイトトレーニングやスプリントなどの超高強度・短時間の運動において主役となる「ATP-CP系」のエネルギーキャパシティが拡大し、より重い重量を、より多くの回数挙げられるようになります(最大筋力と反復能力の向上)。さらに、筋肉内に水分を引き込む作用があるため、細胞のボリュームが増加し、筋タンパク質の合成(筋肥大)を強力にシグナルする効果もあります。ローディング期(1日20gを5日間)を経て、維持期(1日3〜5g)を継続するのが一般的な摂取方法です。

3. カフェイン:中枢神経の覚醒と持久力向上

コーヒー等に含まれるカフェインは、合法かつ極めて強力なエルゴジェニックエイドです。カフェインの主な作用機序は、脳内で疲労や眠気を感じさせるアデノシンという物質の働きをブロックし、中枢神経系を興奮させることです。これにより、覚醒レベルと集中力が高まるだけでなく、運動中の「キツさ(主観的運動強度:RPE)」を低下させ、実際よりも楽に感じさせる効果があります。持久力競技のパフォーマンス向上効果が最も有名ですが、近年ではスプリントや最大筋力テストなど、無酸素性のパワー発揮においても有効であることが証明されています。運動の約60分前に、体重1kgあたり3〜6mgのカフェイン(体重70kgなら210〜420mg:コーヒー2〜3杯分)を摂取するのが最適とされています。

4. バッファー系サプリメント:ベータアラニンと重炭酸ナトリウム

400m走、レスリング、高レップでのスクワットなど、約1〜3分間持続する高強度の運動では「解糖系」がフル稼働し、筋肉内に乳酸と「水素イオン」が大量に蓄積して強烈な疲労(バーン)を引き起こします。この水素イオンによる酸性化(pHの低下)を中和・緩衝し、疲労を遅らせる効果を持つのが「バッファー系」のサプリメントです。代表的なものが「重炭酸ナトリウム(重曹)」と「ベータアラニン」です。重曹は運動前に摂取することで血液のアルカリ性を高め、水素イオンを筋肉から引き出す効果がありますが、胃腸障害(下痢)のリスクがあるため注意が必要です。一方、ベータアラニンは毎日継続摂取することで筋肉内の「カルノシン」という緩衝物質の濃度を高め、筋肉内部から直接酸性化を防ぐ効果があります。

理解度チェック:例題

Q. 最も科学的根拠が強いサプリメントの1つであり、筋肉内の貯蔵量を増やすことで「ATP-CP系」の能力を高め、爆発的なパワーや最大筋力の向上をもたらすものは何でしょうか?

▶ 答えと解説を見る

A. クレアチン(クレアチンモノハイドレート)

解説: クレアチンは肉や魚にも含まれる安全な物質です。瞬発的なエネルギーを生み出すだけでなく、細胞の水分量を増やして筋肥大を促す効果も高いため、ストレングストレーニングにおいて必須級のサプリメントとされています。

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