身体を作り、動かすためのエネルギー源となる「タンパク質」「脂質」「炭水化物」の役割と、アスリートにおける摂取基準を解説します。
筋肉を始めとする身体のあらゆる組織(皮膚、髪、臓器、さらには酵素やホルモンまで)の材料となるのがタンパク質です。タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されており、そのうち9種類は体内で合成できない「必須アミノ酸(EAA)」と呼ばれ、食事から摂取する必要があります。レジスタンストレーニングを行うアスリートは、筋線維の微細な損傷を修復し、より太く強い筋肉を合成(筋肥大)するために、一般人よりもはるかに多くのタンパク質を必要とします。国際スポーツ栄養学会(ISSN)などの基準では、体重1kgあたり「1.4〜2.0g」の摂取が推奨されています。また、タンパク質は一度に吸収・合成できる量に限界があるため、1日の総量を3〜5回の食事やプロテインシェイクで均等に分割して摂取することが、血中アミノ酸濃度を高く保ち、筋分解(カタボリック)を防ぐための基本戦略となります。
炭水化物(糖質)は、体内でグルコースに分解され、筋肉や肝臓に「グリコーゲン」として貯蔵されます。高強度のスプリントやウエイトトレーニングといった無酸素性の運動(解糖系)において、この筋グリコーゲンは最も素早く強力なエネルギー源として働きます。炭水化物が不足すると、トレーニングの出力が低下するだけでなく、身体はエネルギーを補うために自らの筋肉(アミノ酸)を分解して糖を作り出そうとします(糖新生)。そのため、激しいトレーニング期には総摂取カロリーの50〜65%を炭水化物から摂取することが推奨されます。また、持久系アスリートが試合前にグリコーゲンの貯蔵量を最大化する「カーボローディング」は、パフォーマンスの低下(壁にぶつかる現象)を遅らせる非常に有効な栄養戦略です。
「脂質=太る」というネガティブなイメージを持たれがちですが、アスリートにとって脂質は極めて重要なマクロ栄養素です。脂質は細胞膜の主要な構成成分であり、脂溶性ビタミン(A, D, E, K)の吸収を助けるだけでなく、筋肉の成長に不可欠な「テストステロン」などのステロイドホルモンの材料となります。極端な脂質制限(ローファット)はテストステロン値の低下を招き、回復と筋合成を妨げます。さらに、マラソンなどの長時間の有酸素運動においては、限られたグリコーゲンを節約しながら、ほぼ無尽蔵にある脂肪をエネルギーとして燃やし続ける能力がパフォーマンスを決定づけます。健康的な脂質(オメガ3脂肪酸、オリーブオイル、ナッツ類など)を中心に、総摂取カロリーの20〜30%程度を確保することが推奨されます。
アスリートの食事は「何をどれくらい食べるか(マクロバランス)」だけでなく、「トレーニングの時期に合わせてどう変化させるか(栄養のピリオダイゼーション)」が重要です。オフシーズンの筋肥大期には、オーバーカロリー(消費カロリーより摂取カロリーを多くする)状態を作り、タンパク質と炭水化物を十分に摂取します。試合が近づく減量期には、筋肉量を維持するためにタンパク質の摂取量を高く保ちながら(体重1kgあたり2.0〜2.5gまで引き上げることもあります)、炭水化物と脂質の量を調整してアンダーカロリー状態を作ります。CSCSは、クライアントの目標や競技特性、現在の身体組成を正確に評価し、科学的根拠に基づいたマクロ栄養素の処方を行う能力が求められます。
Q. レジスタンストレーニングを行うアスリートにおいて、筋肉の合成と修復を最大化するために推奨される1日のタンパク質摂取量(体重1kgあたり)はどれでしょうか?
A. 1.4〜2.0g / kg
解説: 一般人は0.8〜1.0gで十分ですが、激しいトレーニングで筋組織を破壊するアスリートには多量のタンパク質が必要です。体重70kgの選手であれば、約98g〜140gを1日で摂取することが目標となります。