人間の関節は主に「てこ」として働いています。それぞれのてこの種類と、それが筋力発揮にどのような影響を与えるか(メカニカルアドバンテージ)を学びます。
人間の身体の関節は、筋肉(力)、骨(てこ)、関節(支点)を用いた「てこの原理(Lever system)」で動いています。「支点から筋肉の付着部までの距離(筋アーム)」を「支点から負荷(ダンベル等)までの距離(抵抗アーム)」で割った数値を「メカニカルアドバンテージ」と呼びます。この数値が1.0より大きければ「機械的に有利(小さな力で重いものを持ち上げられる)」であり、1.0未満であれば「機械的に不利(重いものを持ち上げるために、それ以上の筋力が必要)」となります。
「支点」が「力(筋肉)」と「負荷」の間にあるタイプのてこです。公園のシーソーをイメージしてください。人体の例としては、頭部(負荷)を首の筋肉(力)が第一頸椎(支点)をまたいで支える動きや、肘を伸ばすトライセプスエクステンションが挙げられます。第1種てこは、筋アームと抵抗アームの長さのバランスによって、メカニカルアドバンテージが1.0より大きくも小さくもなり得ます。
「負荷」が「支点」と「力(筋肉)」の間にあるタイプのてこです。工事現場の手押し車をイメージしてください。このタイプは、常に筋アームが抵抗アームよりも長くなるため、メカニカルアドバンテージが常に1.0より大きくなります。つまり「小さな力で重いものを動かせる」極めて力の強いシステムです。人体の例としては、つま先(支点)で立ち上がり、体重(負荷)をふくらはぎの筋肉(力)で持ち上げるカーフレイズ(足関節の底屈)が代表的です。
「力(筋肉)」が「支点」と「負荷」の間にあるタイプのてこです。ピンセットやトングをイメージしてください。このタイプは、常に抵抗アームの方が長くなるため、メカニカルアドバンテージは常に1.0未満(機械的に不利)となります。例えばバイセプスカールでは、10kgのダンベルを持ち上げるために、上腕二頭筋は数十kg〜100kg以上の張力を発揮しなければなりません。しかし、力学的に不利である代償として、「筋肉が少し縮むだけで、末端の負荷を高速で大きく動かせる(スピードと可動域の優位性)」というメリットがあります。実は人間の関節の大部分はこの第3種てこであり、人間は「重いものを持ち上げる」ことよりも「末端を素早く動かして物を投げる・走る」ことに適した進化を遂げていることがわかります。
Q. 力学的に「不利(メカニカルアドバンテージが1.0未満)」である代わりに、末端を速く・大きく動かすことに適しており、人間の関節の大部分を占める「てこ」の種類はどれでしょうか?
A. 第3種てこ
解説: バイセプスカール(肘関節の屈曲)などに代表される第3種てこは、力には劣りますがスピードに優れています。人間が槍を速く遠くまで投げられるのはこのためです。