筋肉は「運動単位」というグループごとに制御されています。軽い負荷から重い負荷へ移行する際、どのように筋肉が動員されていくのか(サイズの原理)を解説します。
私たちが筋肉を動かそうとするとき、脳からの指令は脊髄を通って「運動神経(運動ニューロン)」へと伝わります。1本の運動神経の末端は枝分かれしており、複数の筋線維に接続しています。この「1本の運動神経」と「それが支配(接続)しているすべての筋線維の束」をセットにしたものを『運動単位(モーターユニット)』と呼びます。ここでの重要なルールが「全か無かの法則(All-or-None Law)」です。これは、運動神経に発火(指令)が起こった場合、その運動単位に属するすべての筋線維が「100%の力で完全に収縮する」か、あるいは閾値に達せず「全く収縮しない(0%)」かのどちらかしかないという法則です。「50%の力で軽く収縮する」というような器用なことは、1つの運動単位レベルでは不可能なのです。
1つの運動単位に含まれる筋線維の数(支配比)は、筋肉の部位によって全く異なります。例えば、目を動かす外眼筋や、指先を動かす筋肉など、極めて精密なコントロールが必要な部位では、1つの運動神経がわずか10〜20本の筋線維しか支配していません(小さな運動単位)。これに対し、大腿四頭筋(太もも前側)や大臀筋(お尻)など、細かな動きよりも強大なパワーを発揮することが求められる部位では、1つの運動神経が数百から数千本もの筋線維を一斉に支配しています(大きな運動単位)。このように、筋肉はその役割に応じて運動単位のサイズを変えることで、滑らかで精密な動作と、力強い動作を使い分けているのです。
「全か無かの法則」があるにも関わらず、私たちが生卵を優しく持ったり、重いバーベルを全力で持ち上げたりと、力を自在に加減できるのはなぜでしょうか。その答えが「サイズの原理」です。筋肉が力を発揮し始めるとき、中枢神経系はまず、動員するのに必要な刺激の閾値が低い(小さな指令で発火する)『サイズの小さな運動単位』から優先的に動員します。これらは主に遅筋線維(Type I)で構成されており、発揮する力は小さいですが疲労しにくい特徴があります。そして、より大きな力が必要になるにつれて、徐々に閾値の高い『サイズの大きな運動単位』(主に速筋線維:Type II)が追加で動員されていくのです。つまり、軽い負荷の運動ではType I線維しか働いておらず、負荷が増すにつれてType IIa、最後にType IIxが参加するという順番になります。
サイズの原理から導き出される重要な結論は、「大きな力を持つ速筋線維(Type II)を鍛えるためには、それらが動員される環境を作らなければならない」ということです。そのためには主に3つのアプローチがあります。1つ目は「高重量を扱うこと(最大筋力トレーニング)」。85% 1RM以上の重さであれば、最初から高閾値の運動単位が総動員されます。2つ目は「軽い重量を爆発的なスピードで動かすこと(パワートレーニング)」。重量が軽くても、最大限の加速を試みることで大きな力が必要となり、速筋線維が動員されます。そして3つ目が「低〜中重量で疲労困憊(限界)まで反復すること(筋肥大トレーニング)」。最初は遅筋線維で対応していても、それらが疲労してくると力を維持するために、休んでいた速筋線維が次々と助っ人として動員されるためです。
Q. 筋肉が力を発揮する際、最初はサイズの小さな運動単位(主にType I)から動員され、より大きな力が必要になるにつれてサイズの大きな運動単位(主にType II)が追加で動員される法則を何と呼ぶでしょうか?
A. サイズの原理
解説: これが「サイズの原理」です。高重量を扱う、あるいは爆発的なスピードで動かす、限界まで反復するといった条件を満たすことで初めて、サイズの大きな運動単位(速筋線維)を動員して鍛えることができます。